Studio knotでは、完成した作品だけではなく、
その子がどこで迷ったのか、何を基準に選んだのか、どんな言葉が生まれたのかを記録しています。
プロジェクトを終えた子には、その記録をまとめてお渡ししています。
同じ進め方で始めても、出来上がったものも、そこまでの進み方も、4人それぞれ違いました。迷いなく進んでいく子。書いては消して、また戻って、少しずつ進む子。作品だけを見ていたら、気づかないことです。
Studio knotで私が見たいのは、
「子どもたち」じゃなくて、「この子」なんだと思います。
上手に描けたか、きれいに縫えたかだけではなく、何に心が動いたのか。どこで迷ったのか。何を選んだのか。なぜそうしたのか。そんな、完成した作品からは見えない時間も大切にしています。
子どもの「好き」も、考え方も、きっとこれから少しずつ変わっていきます。だからこの記録も、「この子はこういう子」と決めるためのものではなく、今この瞬間に見えた姿を残しておくものだと考えています。
全5回を終えたあと、その子だけの冊子としてお渡ししています。
つくったものと、そこに込めた考え。「なぜそれにしたのか」を、本人の言葉と一緒に残します。
何を比べ、どこで立ち止まり、どうやって決めていったのか。迷った時間も、その子の考えている時間として書きます。
裁断やミシンの場面での様子。こわがっていたこと、それでもやってみたこと、途中で変わっていったこと。
その子に見えた力を、4つほどの言葉にして整理します。技術の上手さではなく、考え方や選び方の特徴です。
最終回の展示で、どんな質問が届き、本人がどう答えたのか。実際に交わされた言葉をそのまま残します。
5回を通して感じたことと、これから見てみたいこと。評価ではなく、一人の大人として見えたことを書いています。
2026年夏のプロジェクトで、記録に残された子どもたちの言葉です。
「ピンクは4番目に好き。1番は水色、次は青、次は黒。でもピンクの浴衣は持ってないから。」
好きな色だから、だけではなく、「今持っていないものをつくりたい」という理由を持って選んでいました。ミシンの前では「ちょっとこわい」と言いながら、「私はイノシシだから!」と自分を励まして踏んでいました。
「ひまわりの方が描くのが簡単そうだし、目立ちそう。」
「自分に描けるか」と「完成したときにどう見えるか」の両方を比べながら選んでいました。ミシンは最初とても慎重でしたが、慣れてくると鼻歌が聞こえてくるくらいに。最後には自分の作品を「仕上がりは完璧」と、自分の言葉で肯定していました。
グラデーションの布に合わせる糸を選ぶとき、どの色にも「合うところ」と「合わないところ」があって決めきれない場面がありました。そこでこの子は、布の4か所にそれぞれの糸を当て、合い方を点数にして比べ始めました。
誰かに「どれがいい?」と答えを求めるのではなく、「自分が納得して選ぶには、どうやって比べたらいいだろう?」と、判断する方法そのものを自分でつくっていました。
「丸に惹かれる。」「肩甲骨が見えた方が綺麗に女性っぽく見える。」
「なんとなく好き」の奥に、その子だけが分かる惹かれる理由がありました。初めて縫う服としては難しい形でしたが、自分が「こう見せたい」と思う部分には、難しさがあっても進んでいきました。
※ 掲載にあたって、お名前は伏せています。
最初は、一人ずつみんなの前で発表してもらうつもりでした。でも聞いてみたら、子どもたちは全員「発表は嫌」。それでも「伝える」だけはなくしたくなかったので、方法のほうを変えました。
作品とデザインシートを展示して、自由に見て回る形に。作品の横に付箋を置いて、「ここが好き」「なんでここはこうしたの?」を、お手紙みたいに書いて貼っていきます。そうしたら、4人の作品のまわりが付箋でいっぱいになりました。
伝えるって、自分の考えを一方的に説明することではなくて、
自分と誰かの間に、やりとりが生まれることなのかもしれません。